私たちの命、健康、くらし、人生にとって、「食」の重要性はいうまでもありません。「食」は、命と健康の土台であり、くらしの根幹であり、人生、そして文化そのものです。食物栄養学専攻は、この「食」を、特に「健康」の観点から捕らえていく場であり、さまざまな分野の研究者がここに集い、日々弛まぬ研究生活の中で、「食」と「健康」のエキスパートたちを育成しています。
食物栄養学専攻には、食品化学、食品加工学、調理学、基礎栄養学といった「食」が私たちの口に入る前の段階から、生理学、臨床栄養学、臨床医学といった「食」が口に入った後の「健康」に至る一連の様々な分野、さらには、生化学、分子生物学、微生物学、食品衛生学、予防医学といった、「食」と「健康」の基礎および応用分野の専門家たちが一堂に会しています。また、それぞれの研究が互いに融合し、反応し合い、飛躍的に発展する、他学部では決して真似のできない研究活動が行われています。当専攻の大学院学生たちは、まさにその場に身を置いて研究に参画し、日々の事柄を学んで、「食」と「健康」のエキスパートになっていくのです。
こうした経験は、そのまま大学で研究所や研究を続けても、修士・博士号をもった管理栄養士として社会に羽ばたいても、必ずや大きな武器となります。貴女も、そうした毎日のワクワクする研究活動を通じて、この大きな武器を手に入れてみませんか。
12名の専任教員によって構成されています。専任教員はそれぞれの専門の授業を行うほか、所属する大学院学生一人ひとりの教育と指導にあたります。
前期課程の授業は「特論」と「演習」から構成され、すべて専任教員が担当します。「特論」は専任教員が学問を体系的に教授します。「演習」では、国内外の研究論文を輪読し、解説を加え、討論しながら、大学院学生がこれから研究を進めるうえで必要な研究方法、技術、考え方を身につけます。後期課程においては、博士論文作成を目標とした演習・実験研究調査を中心に教育と指導を行います。
授業科目 | 担当教員 |
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食品化学特論 | 教授 安藤 清一 |
食品分析学特論 | 教授 木村 万里子 |
食品加工学特論 | 准教授 宮本 有香 |
調理科学特論 | 教授 後藤 昌弘 |
食品衛生学特論 | 教授 栗原 伸公 |
食品微生物学特論 | 教授 甲斐 達男 |
栄養学特論 | |
栄養化学特論 | 教授 狩野 百合子 |
生化学特論Ⅰ | 准教授 田村 奈緒子 |
生化学特論Ⅱ | 教授 小倉 嘉夫 |
生物化学特論 | 准教授 田村 奈緒子 |
生物統計学特論 | 教授 栗原 伸公 |
栄養生理学特論 | 教授 甲斐 達男 |
臨床栄養学特論Ⅰ | 教授 竹中 優 |
臨床栄養学特論Ⅱ | |
臨床栄養管理学特論 | |
病態栄養学特論 | 教授 置村 康彦 |
食品化学演習a・b | 教授 安藤 清一 |
食品分析学演習a・b | 教授 木村 万里子 |
食品加工学演習a・b | 准教授 宮本 有香 |
調理科学演習a・b | 教授 後藤 昌弘 |
食品衛生学演習a・b | 教授 栗原 伸公 |
食品微生物学演習a・b | 教授 甲斐 達男 |
栄養学演習a・b | |
栄養化学演習a・b | 教授 狩野 百合子 |
生化学演習Ⅰa・b | 准教授 田村 奈緒子 |
生化学演習Ⅱa・b | 教授 小倉 嘉夫 |
生物化学演習a・b | 准教授 田村 奈緒子 |
栄養生理学演習a・b | 教授 甲斐 達男 |
臨床栄養学演習Ⅰa・b | 教授 竹中 優 |
臨床栄養学演習Ⅱa・b | |
臨床栄養管理学演習a・b | |
病態栄養学演習a・b | 教授 置村 康彦 |
家政学研究特別講義a・b | 全担当教員及び外部講師 |
特別研究 | 各担当教員 |
研究指導の分野 | 担当教員 |
---|---|
食品化学 | 教授 安藤 清一 |
食品分析学 | 教授 木村 万里子 |
食品加工学 | |
調理科学 | 教授 後藤 昌弘 |
食品衛生学 | 教授 栗原 伸公 |
食品微生物学 | 教授 甲斐 達男 |
栄養学 | |
栄養化学 | 教授 狩野 百合子 |
生化学 | 准教授 田村 奈緒子 |
生物化学 | |
栄養生理学 | |
臨床栄養学 | 教授 竹中 優 |
病態栄養学 | 教授 置村 康彦 |
※a=前期開講科目 b=後期開講科目
2022年度の各課程の概要について表示しています。
博士前期・後期課程は、共に3名の複数指導教員によって指導する体制をとっています。通常の研究が行われる各専任教員の研究室のほか、中央機器室や共同実験室、実験動物施設など、研究や実験のための施設・設備が充実しています。専門領域を越えての研究室・研究者間の交流が盛んで、大学院学生が研究成果をあげる基盤となっています。オンライン情報検索によって、学外の図書館や英国・大英図書館にある学術雑誌、文献を調べることができます。また、関連専門分野の学会に入会し、研究成果を機関誌や国際的な雑誌に投稿したり、発表することを奨励しています。
食物栄養学の分野で活躍できる有能な研究者及び専門技術者を目指します。また、すでに教員免許状(栄養教諭1種)を所有している者は、前期課程在学中に所定の単位を修得すれば専修免許状を取得することができます。
抗酸化作用や生活習慣病の予防効果が期待されるカロテノイドは、生物に普遍的に存在する脂溶性の生理活性色素である。一方、ニンジンやトマト、柑橘類など、身近なカロテノイド含有植物性食品の脂質量はきわめて少なく、これら食品由来の果汁を放置することによって、薄く着色した上澄みが生成する。植物性食品では、本来脂溶性であるカロテノイドが水溶性に可溶化される可能性を強く示唆する。当研究室では、水溶性に可溶化されるカロテノイドの存在を植物性食品に見出し、脂溶性カロテノイドの水溶化に関わる特異的タンパク質の役割について食品化学的に明らかにする。この特異的タンパク質は、新たな機能性食品素材としての利用が期待される。
栄養素は細胞間の情報伝達を担う分子ではないかという観点から、これらの作用、および、変調による病態形成について研究している。また、ホルモンやサイトカインなど他の情報伝達物質との相互作用について検討している。
コレステロールおよび胆汁酸代謝に関する研究を行っている。胆汁酸は脂質吸収やコレステロール代謝を制御する物質として生体内で重要な役目を果たしている。近年では核内レセプターのリガンドやエネルギー代謝にも関わり、新しい展開が見られている。当研究室では胆汁酸代謝を制御する腸内細菌を利用して大腸癌予防に寄与するプロバイオティクスの開発を試みている。また、生活習慣病に関与するコレステロールおよび胆汁酸代謝についても研究を行う。
製パン用の発酵種に棲息する主要発酵微生物に関して、現在、次のような研究を行っている。
「食品中の非栄養素の生体への新しい生理的機能の解明とその解析」をテーマに、特に香辛料の中で、ガーリックに注目し、ラットにガーリックを投与したときの脂質代謝及び蛋白代謝への影響について研究を行っている。また、一価不飽和脂肪酸を多く含み、クロロフィルやポリフェノールなどの微量成分を多く含むエキストラバージンオリーブ油について、体熱産生及びステロイド代謝への影響について研究している。
あらゆる物質はおもにその量により、生体に対して有害にもなれば有益にもなる。金属も例外ではなく、有害重金属の多くは、必須微量元素でもある。それらの金属類の生体に対する毒性と生体での役割、さらにはその機序について、疫学的研究、および、生理学、組織学、分子生物学的手法を用いた実験的研究の両面から、多角的に分析する。
食と疾患の関係について分子生物学的手法を用い検討する。種々の栄養素が細胞機能にはたす役割を遺伝子の発現とその機能解析という観点から解明を試みている。また、栄養素の抗老化作用の検討を行っている。
Ⅰ型アレルギー疾患(喘息やアトピー)は、花粉などの抗原が体内の抗体IgEと結合し、それがさらにマスト細胞と反応して起こる。その時、マスト細胞は活性化されて、「脱顆粒」つまり、ヒスタミンなどを放出し、多種のサイトカイン(IL-1、IL-6、ケモカイン、TNF-α)を産出分泌する。当研究室では現在3種類の食材についてマスト細胞の脱顆粒を抑制する効果があることを明らかにしている。その抑制メカニズムおよび、有効成分の性質について研究を進めている。有効成分の構造解析後、有効成分合成反応についても明らかにしたい。
製バンにおける品質改良効果とその機構に関する研究、加熱殺菌条件が異なる脱脂粉乳のコロイド科学的性質に関する研究、メレンゲの起泡状態とマカロン焼成に関する研究、トマトに含まれる生理機能成分オキソ酸およびその調理加工特性に関する研究など、食品を加工、貯蔵することにより起きる食品中の様々な成分変化や、食感、保存性など品質を改良するメカニズムについて研究を行っている。