近年、世界ならびに日本が直面している少子高齢化対策のひとつとして、健康寿命を延ばすことが直近の重要な課題となっています。平均寿命と健康寿命との差は、日常生活に制限のある「不健康な期間」を意味しており、平均寿命が延びる以上に健康寿命を延ばす(不健康な状態になる時点を遅らせる)ことが、個人生活の質(QOL)の低下を防ぐ観点や、社会的負担・医療費軽減の観点から重要となっています。
健康寿命を延ばすためには食生活を中心とする生活習慣の改善、生活環境の改善、健康教育による健康増進策の提案などの「疾病の一次予防」に重点をおいた取り組みが必須となりますが、健康栄養学研究科健康栄養学専攻では、人間栄養学の理論と実践を基盤として、運動・食生活・福祉の分野に連関させて総合的な健康へのアプローチができる、あるいはそのために必要な科学的知見を生み出すことのできる高度な知識と経験を習得し、これらにおいて総合的にサポートできる人材の養成を目指しています。
「食」を中心とした「運動・食生活・福祉」の連関は、健康に生活するための極めて重要な要素ですが、博士の学位を取得している10名の教員や、それらの分野で専門的な資格を有する教員(医師、薬剤師、管理栄養士、臨床検査技師、中学校・高等学校教諭免許(家庭)、中学校・高等学校教諭免許(保健体育))が指導を行います。また、「スポーツ基本法」においては、障がい者に対して障がいの種類及び程度に応じて必要な配慮をしつつ推進すること、とされていますが、当専攻ではスポーツ栄養アドバイザー、福祉レクリエーション・ワーカー、中級障がい者スポーツ指導員、社会福祉士の資格を有する教員も所属しています。上記のような資格を有した専門家である教員が協力し、健康に対して多角的かつ包括的なアプローチができる体制を構築しています。
健康栄養学という分野は、人の生活に直結する分野であり、座学での学びはもちろん、現場で使える理論と実践が求められます。当専攻の講義は、理論に基づく「特論」、実践に基づく「演習」と「フィールドワーク」から構成されており、各教員が「食・食生活・福祉・運動」の関連分野を融合させ、健康について体系的な教育を行います。修士論文は、各研究室で行う実験を中心に、フィールドワークにおける研修から得られる知見も併せて、作成に取り組みます。また、病院や福祉施設の栄養部などと連携し、現場での実践的な研究・教育を受けることも可能となるカリキュラムを構成しています。
基礎の研鑽と臨床の橋渡し研究、および各種現場を意識した人間栄養学を基本に据えた研究を各研究室の教員と共同で実施することにより、健康栄養学の能力を養う修士課程のカリキュラムとなっています。
授業科目 | 担当教員 |
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健康栄養学概論 | 教授 奥野 直 教授 佐藤 勝昌 教授 吉川 豊 教授 小笠原 慶彰(兼担) 教授 木村 大輔 |
栄養生理学・疫学特論 | 教授 木村 大輔 |
食品機能・加工学特論 | 准教授 糸井 亜弥 |
分子栄養学特論 | 教授 吉川 豊 |
健康科学特論 | 教授 奥野 直 |
給食経営管理特論 | 教授 佐藤 誓子 |
社会福祉特論 | 教授 小笠原 慶彰(兼担) 教授 佐々木 勝一(兼担) 教授 泉 妙子(兼担) 教授 植戸 貴子(兼担) 准教授 下司 実奈(兼担) 准教授 曽田 里美(兼担) 教授 津田 理恵子(兼担) |
栄養衛生学特論 | 教授 佐藤 勝昌 |
国際栄養学特論 | 准教授 松本 衣代 |
食生活特論 | 教授 佐藤 誓子 |
スポーツ栄養学特論 | 准教授 糸井 亜弥 准教授 坂元 美子(兼担) |
予防栄養学・医学特論 | 教授 斎藤 あつ子 |
臨床栄養学・医学特論 | 教授 斎藤 あつ子 |
食品・臨床分析学演習 | 教授 吉川 豊 |
運動・機能生理学フィールドワーク | 教授 奥野 直 准教授 木村 あい(兼担) 准教授 重福 京子(兼担) |
臨床栄養管理学フィールドワーク | 教授 斎藤 あつ子 |
国際栄養フィールドワーク | 准教授 松本 衣代 |
健康栄養学特別総合研究 | 各指導教員 |
※2023年度入学生の健康栄養学専攻の教育課程を表示しています。
本研究科には、原子吸光光度計、高速液体クロマトグラフィー、吸光・蛍光・発光プレートリーダー、微小循環モデル装置(MC-FAN)、体組成計、エアロバイク、高気圧酸素カプセルなど最先端の化学分析機器、運動評価機器が揃っており、最新の調理設備や動物実験施設等の人や動物を対象とした研究を教授できる体制が整っています。これらの研究においては、主指導教員のほかに、複数の教員から指導を受けられる体制を取っており、研究成果を学会機関誌や国際的な雑誌への投稿や、国内外の学会での発表を推奨しています。情報処理室の設備も整っているのでオンラインの情報検索により、国内外の学術雑誌、文献等を調べることも可能であり、能力を十二分に伸ばせる環境を整えていることが特徴です。
健康増進施設や老人福祉施設などの栄養に関わる管理指導者、大学・企業・研究所における教育・研究者等を目指します。
研究室名
運動生理学研究室
学位
博士(医学)
研究分野(専門)
コメント可能ジャンル
環境生理学、運動生理学、機能運動学
これまでの実績、今後の研究プラン
スポーツドリンクの開発に関わり、スポーツドリンクは、現在でも多くのスポーツ選手や熱中症予防に役立っている。 ダイレクトに役立つ研究として、バランス能力向上や姿勢改善の運動方法についての研究を中心に行いたい。
研究室名
基礎栄養学研究室
学位
博士(保健学)
研究分野(専門)
コメント可能ジャンル
感染免疫学、食品衛生学、寄生虫学
これまでの実績、今後の研究プラン
コメント
研究室名
臨床医学・予防医学研究室
学位
博士(医学)
研究分野(専門)
ヒトは、微生物の感染によって感染症に罹患し様々な害を受けますが、逆に、感染によって多くの利益や恩恵も受けており、腸内細菌が代表的な例として挙げられます。私達は、これまで、ヒトや動物の血液に感染/寄生する原虫症の分子疫学的、病態解析学的研究を行ってきましたが、血液に感染/寄生する原虫であっても、病気(感染症)を起こさず持続感染しているものがあり、これらは、ヒトや動物と共生に近い状態にあって何らかの恩恵をヒトや動物に与えている可能性が示唆されます。一方、ヒトや動物の感染症は、一般に、薬物で治療されますが、毎日の食事内容が、体内に感染/寄生(共生)する微生物の動静に大きな影響を与えることは容易に想像でき、感染症の治療に積極的に活用できる可能性は大いにあります。本研究室では、これまでの研究成果を基に、微生物の感染/寄生(共生)が健康の維持や増進に適用できる可能性について、また、食事内容が体内に感染/寄生(共生)する微生物・感染症に与える影響について、他面的に解析検討し、健康増進や疾病予防の新たな道を拓くことを目指しています。
コメント可能ジャンル
感染症学、微生物学、寄生虫学、感染予防学、健康医学
これまでの実績、今後の研究プラン
研究室名
栄養衛生学研究室
学位
博士(医学)
研究分野(専門)
コメント可能ジャンル
衛生学、公衆衛生学、免疫学(食物アレルギー)、微生物学
これまでの実績、今後の研究プラン
これまでの実績:競争的資金の研究課題
今後の研究プラン
研究室名
給食・栄養管理学研究室
学位
博士(食物栄養学)
研究分野(専門)
コメント可能ジャンル
給食の栄養管理、食物アレルギー
これまでの実績、今後の研究プラン
https://researchmap.jp/read0050489をご参照ください。
研究室名
食品機能分析学研究室
学位
博士(理学)
研究分野(専門)
特に、
コメント可能ジャンル
生物無機化学、メタロミクス研究、ミネラル、金属錯体、糖尿病
これまでの実績、今後の研究プラン
https://researchmap.jp/read0147722をご参照ください。
コメント
研究室名
応用健康科学研究室
学位
博士(医学)
研究分野(専門)
コメント可能ジャンル
食事記録法・食物摂取頻度調査法・歩数計法
これまでの実績、今後の研究プラン
https://researchmap.jp/aya.itoiをご参照ください。
研究室名
国際栄養学研究室
学位
博士(食物栄養)
研究分野(専門)
本研究の目的は、主に以下の2つである。
また、本研究に並行する形で、東南アジア地域における急激な食習慣の変化により生じた栄養転換等の健康問題を解決すべく、食経験情報を元に、 現地食品の健康効果について、現地研究者と共同研究を進めている
コメント可能ジャンル
世界の食文化
これまでの実績、今後の研究プラン
https://researchmap.jp/kinu-labをご参照ください。