看護教育における演習とは、講義の抽象と実習の具体を結びつけるものである。学生は知識による抽象から実習の具体の間を常に行きつ戻りつつも、学び方を学ぶ力を身につける。1年生の前期科目「コミュニティヘルスケア看護技術演習Ⅰ」から基礎看護技術教育が開始され、1年生後期期科目から本格的な看護技術演習が展開されている。本学部の教育体制は、コミュニティ・ケアシステム領域を中核に医療看護領域、成育看護領域の3大領域制をとっており、看護技術を専門として教授する領域を持たない点が特徴である。
演習時期 | 演習科目 | 授業概要 |
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1年生 前期 |
コミュニティヘルスケア看護技術演習Ⅰ |
医療施設、在宅の場で病にある人を援助するにあたり、生活援助に必要な基本的知識を使い、援助を実践していく過程を学習する。看護者側だけでなく、療養者の立場で援助を受ける体験をし、援助を受ける意味を考え、振り返り評価することを行う。基本的看護技術のうち、病床環境を整えること、基本的活動・排泄援助、対象とのコミュニケーション、バイタルサインの測定に関する知識、技術を身につける。 例)ベットメイキング、体位変換、患者の移動・移送、手袋のつけ方・外し方、口腔ケア、バイタルサインの測定 など |
1年生 後期 |
生活援助論 |
対象者の個別性に応じた基本的ニードを充足し、健康状態をより望ましい状態に調整する基本的な日常生活援助として、清潔・衣生活、苦痛の緩和・安楽確保の知識と技術について学ぶ。演習においては、看護援助に必要な技術、姿勢を習得するための訓練を行う。また、看護技術の提供および看護の受け手の体験を通し、自身の看護の姿勢が対象者におよぼす影響や看護技術の根拠について考え、生活を援助する意義を理解できるようにする。 例)全身清拭、陰部洗浄、手浴、足浴、爪きり、温罨法・冷罨法 など |
演習時期 | 演習科目 | 授業概要 |
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2年生 前期 |
治療看護論 |
治療や看護を効果的に実践するには、対象となる人が自らの病気や症状をどのように受け止めているかといった、その人独自の病気の体験をつかんでおく必要がある。本科目では、「人体のしくみと機能」、「疾病と治療」などで学んだ知識を活用して、病気と治療に対する人の反応をアセスメントする方法(具体的には、看護ヘルスアセスメントを実践するために必要な知識や技術)について学ぶ。 また、人の生命を維持する技術として一次救命処置や、人のQuality of Lifeを維持する技術として薬物療法を中心とする治療支援、治療選択における自己決定などについても学習する。 例)関節可動域と筋力の測定、皮膚の視診・触診、乳房の自己検診、呼吸音の聴取、腹部の視診・触診・聴診・打診、バイタルサインの測定、心音の聴取、意識レベルの確認、瞳孔の観察、対光反射、BLS(Basic Life Support)など |
2年生 後期 |
コミュニティヘルスケア看護技術演習Ⅱ |
何らかの要因により、健康レベルの低下によってもたらされる療養者の生活上の健康課題に対し、対象者の状況に応じた援助を行うことができるように、必要な知識と援助方法を学習する。人の身体観察方法を身につけ、フィジカルアセスメントを病室の環境を設定したスペースだけでなく、在宅や施設などでの生活の場を設定したスペースで実践し、それぞれの対象者の生活場面への援助技術に応用していく。成人期・老年期にある患者の援助に必要な知識と方法をもとに、具体的にその人に見合った援助方法を検討し、実践する。 例)全身清拭、足浴、陰部洗浄、シャワー浴、洗髪、食事介助、経管栄養法、関節可動域訓練、麻痺などの障害がある人の体位変換、点滴ラインのある人の寝衣交換、吸引・気管切開のある人の援助 など |
2年生 後期 |
成育看護技術演習Ⅰ |
成育看護分野における基盤的な看護技術を学ぶ。 小児看護では、子どもの成長・発達のアセスメントや療養生活を支援するために必要な技術として、身体計測、バイタルサインの測定、フィジカルアセスメント、清拭、輸液管理について演習を行う。学生は事前に各演習項目の概要(目的、必要物品、手順、留意点など)についてレポートを作成する。演習では小グループに分かれて、モデル人形もしくは学生同士で技術を学ぶ。 母性看護では、周産期における母子の健康状態を理解するために必要な技術として、妊婦のヘルスアセスメント(レオポルド触診法、胎児心音の聴取)、褥婦のヘルスアセスメント(退行性変化の観察、授乳ケア)、新生児のヘルスアセスメントやケア(衣類の着脱、おむつ交換、沐浴など)について演習を行う。演習は小グループに分かれて行う。 |
演習時期 | 演習科目 | 授業概要 |
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3年生 前期 |
成育看護技術演習Ⅱ | 成育看護分野における看護過程を学ぶ。 母性看護では、出産後早期にある母子とその家族の事例を用いて、褥婦・新生児・家族について健康状態、母子や家族の関係性、親役割取得の視点から情報の整理、解釈・分析、看護計画立案を行う。これらは教員の助言を受けながらグループワークを中心として展開する。立案した計画は成果発表時に実際に学生や教員とロールプレイし、実践する上での示唆を共有する。この一連の過程を通し、母性看護の特徴であるウエルネスの視点について学ぶ。 小児看護では、各発達段階とさまざまな状況(急性期や慢性期)に沿った看護を修得するために、多様な子どもの事例を通してグループワークを行う。小児看護における看護過程の概要を学んだ後に、事例を活用して情報収集、分析、看護目標・看護計画の立案、実施のプロセスについてグループワークを行う。情報収集や実施などは学生同士や教員とのロールプレイを通して行っていく。 |
3年生 前期 |
治療療養支援技術演習 | 本科目では、医療機関で治療を受ける人の健康回復に必要な看護技術(与薬、静脈内注射、筋肉注射、輸液管理、酸素療法・呼吸訓練、吸引、導尿)と、健康状態をモニタリングするために必要な看護技術(採血、心電図)の習得を目指す。さらに、看護技術の対象となる人の身体機能や生活に合わせて看護技術を展開することができるよう、看護技術の根拠を追求する姿勢や態度についても学ぶ。 |