2017.11.12 図書館
総合生活学科 谷山 澤子教授
ターシャの生き方の原点を探り、世界の女性たちを魅了してやまない彼女自身の生き方とそれを支えた信念に触れながら、彼女が残した功績と豊かな創造性に焦点を当てた研究内容の発表を行いました。ターシャの足跡を彼女の絵本の創作活動から紐解き、その独特の温もりのある画風や作品作りに関わる細やかなこだわりを支えた幼少期からの生活環境に触れながら、絵本作家としての功績と生き方へと導いています。特筆すべきことは教員自らが比較文学を主な研究分野とし、国際連合公用語英語検定試験のテキスト作成にも携わっている語学の専門家としてターシャに関する「原書」を何冊も読み解くことで、総合的な視点や観点からアメリカの社会風土を主眼に置いて、ターシャの足跡や人となりを丁寧に読み解いている点にあります。
谷山教授は研究の成果を「彼女の創造性は家計を立てる必要性と独立独歩の精神から生まれたものではあったが、母親と同様に芸術家としてお金に支配された訳ではなく、彼女は自分の生き方を貫き、成功を勝ち取りました。そんな彼女が難関を耐え抜く上で支えとしたのが、アメリカの作家ヘンリー・デイヴィッド・ソローの『私は少なくとも自分の体験から次のことを学びました。自分の夢に向かって確信を持って前進し心に描いた人生を生きるために努力すれば、時期が来れば自ずと成功するでしょう』という言葉でした。
ターシャ・テューダーの創造性や自立心を中心に研究した結果、神女短大図書館がターシャ・テューダーのコレクションをした価値が、テューダーの生き方、即ち、芸術家・作家・母・人間として誠実に生きたこと、しかも果敢に人生の目標に進んだ成果を吸収することにあったのだということがわかりました」とまとめています。
今回の研究成果は、日本語と英語で論考として2018年3月に発表される予定となっており、「ターシャ・テューダー」の人物像に関する初の論文となり、彼女の人生哲学に触れるための入門編となることが期待されます。
幼児教育学科 桐原 美恵子教授
これまでは名前は聞いていても深く作品に触れる機会になかなか恵まれなかった自身のターシャとの出会いから、図書館での作品との出会いやゼミの学生の指導を通して、保育の中に息づくターシャの生き方や作品の持つ魅力が、豊かな感性を持った保育者へ育成することや保育の実践に役だつことを感じ、自らの指導の中で実践した内容について発表しました。桐原ゼミは2017年春に図書館協働事業として、ライブラリー・コモンズで「ターシャの学習会」を開催した経緯があり、その際に写真集や母であるターシャについて子ども達が書いた本や様々な絵本を熱心に読み、人となりや作品に接した感想を発表し合い、成果を個々でまとめています。
桐原教授は、学生から提出された「言葉に何か人を動かす力があり、絵には人を幸せにするように感じた」という感想文を読み、保育とターシャが繋がる事に着目しています。
その根拠を「大人だけでなくまだ成長過程の若者が読んでも、ターシャには読み手の心を動かす不思議な魅力と力がある。ターシャのようなみごとな庭でなくても、子どもたちにとっては身の回りの自然である花や虫などの生き物、風や空の色や雨の音さえも教材となる。教科書がない幼児教育の中では保育者が身の回りのことに関心を持ったり、自然に触れたりしながら子どもたちと遊びを楽しむことが大切であり、遊びや生活の中で気づき、考え、心が動き、体験することが子どもたちの学びになっていく点で自然との触れ合いは必要であり、ターシャの“私たちはみな宇宙の一部なの。宇宙を傷めることは、自分の体を傷つけているのと同じよ。”という言葉は、私たちが保育の中で大切にしていることをそのまま話してくれた気持ちになりました。」と述べています。
桐原教授は実際に八ヶ岳の麓のターシャ・テューダーミニミュージアム訪問時に、生前のターシャの暮らしぶりや人形制作への情熱を聞いたことで、2017年後期のゼミの活動に人形作りを取り入れました。成果は「製作過程の中での失敗が『手を抜かず丁寧な手仕事』に拘ったターシャの創作活動と、その必要性を学生達と共に自らも改めて体験したことである」と報告を行いました。今後も保育支援にコレクションを活かしながら、感性豊かな、創造性に満ちた保育者へと成長するための学習を続けてくれることを期待しています。
食物栄養学科 西川 貴子教授
ターシャは、広大で美しい庭と1800年代の生活に拘り、絵本の他、祖母の代から引き継がれたレシピやクリスマス装飾で有名ですが、ターシャの「食生活」という視点で語られることはありませんでした。西川教授は多くの著書やレシピを読み進める中で、1900年初頭に誕生し、職業を持ち多くのことに挑戦し92歳で亡くなったターシャと、社会に役立つ女性の育成に邁進し99歳で亡くなった創設者の行吉 哉女先生の思い出が重なったことから、今回の発表の副題に“行吉 哉女先生の思い出と重ねて”をつけた経緯を語りました。ターシャ同様に哉女先生も色紙に植物や食材の絵を描き絵が得意であったこと、衣服の製作、健康のために栄養豊かな食の創造を研究するなど、生き方や考えに共通点が感じられます。
今回の発表では秋にミニミュージアムを訪問し、生前ターシャと親交のあった翻訳家や装丁作家の方に、西川教授が直接口頭で聞き取った結果をまとめ、発表を行いました。
ターシャといえば、ウィンターキッチンと呼ばれる薪ストーブとブリキの反射式オーブンが有名です。クリスマスや感謝祭など家族が集まる行事の時は、15分ごとに掛け位置が変えられるオーブンで肉料理を4~6時間かけて焼き、その隙間時間を活用してサラダや付け合せ、デザートやクッキーを作るという手際の良さで食卓を彩っていました。
ターシャはライフスタイルから野菜中心ですが、特に豆類は好きで料理も多くのバリエーションがあったようです。週の2~3日は肉か魚も食べ、考え方は合理的で柔軟な面があり、出来合いの調味料も使って新しい料理を作ってもいたようです。
ターシャにとって庭はおいしいものをテーブルに乗せるためにも必要だったそうで、いい季節は年の内2~3ヶ月のため、収穫した旬の食材は手間ひま掛けて加工し調理に活用していました。人に質問されると、「職業は主婦、家事が好きで料理は大好きな仕事の一つです」と答えていたそうです。特に子育ての極意は「五感の優れた子どもに育てようと、時と心を上手に使いました」という言葉があり、実際に娘の誕生日の様子を絵本にしています。最後のまとめとして、ターシャの81歳のことば『今日は昨日より、明日は今日よりよくしようと思うかどうかで毎日が変わるものよ』を紹介し、「私も実践しようと思っているので、皆さんもぜひそうしましょう。では、これからみなさんでお茶の時間を楽しみましょう」と結びました。