神戸女子大学のNews詳細
2015年11月28日
学園広報
古典芸能研究センター公開研究会開催
神戸女子大学古典芸能研究センターは、2015年11月28日・土曜日、公開研究会「説経節―情念の語り物―」を開催し、約150名の参加者を迎える盛況となりました。
この公開研究会は、2013年度文部科学省「私立大学戦略的研究基盤形成支援事業」に採択された古典芸能研究センターの研究プロジェクト「日本古典芸能の横断的総合的研究拠点の形成」の一環として開催したものです。
午前中は、講演が二つ並びました。最初は、大谷大学名誉教授沙加戸 弘氏の「絵解きと説教―真宗寺院における教化の展開」でした。沙加戸氏は、真宗教団において「説教」がどのように成立し変遷したかを話され、最後に近年まで活躍していた名人の節談説教を聞かせて下さいました。
続く神戸女子大学名誉教授阪口 弘之氏の講演「語り物としての説経―栄華循環の神仏利生譚」では、「説経は神仏と人間の、命の更新(死と再生)の物語」であるという新しい視点を提唱され、「さんせう太夫」「松浦さよひめ」「かるかや」を実例に解説されました。
午後は、4名の研究者による研究発表が行われました。説経節の基層となる唱導説話、奈良絵本・奈良絵巻となった説経の様相、近世における説教者のあり方、現代に残る説経浄瑠璃の紹介など、各専門家が、説経についてそれぞれの角度から焦点をあてた内容が続きました。
参加者は講演や研究発表を終始熱心に聴講されていました。古典芸能研究センターでは、この公開研究会に先んじて、神戸女子大学・神戸女子短期大学オープンカレッジ秋期講座において「説経節―人は神仏に何を托そうとするのか―」と題する全6回の特別講座を2015年10月14日・水曜日〜11月18日・水曜日に開講し、好評を得ていました。そのため、今回の参加者は研究者だけに留まらず、説経節に関心をもつ一般の方々も多く見受けられました。この公開研究会を通して、様々な参加者がそれぞれの立場で「説経節」という語り物に思いを馳せることができた一日だったのではないでしょうか。
2階の展示室では、公開研究会にあわせて、企画展「説経「おぐり」の世界−説経節の広がり−」を開催しました。説経のテキストである正本(しょうほん)や説経「おぐり」を基にして展開された浄瑠璃や歌舞伎の資料、「おぐり」の世界に大きく関わる古典芸能研究センター志水文庫蔵の仏画などを展示しました。休憩時間などには多くの来室者が熱心に資料を見学していました。
なお、この公開研究会の内容は、研究プロジェクトの成果刊行物として2016年度に公刊する予定です。
公開研究会のプログラム
- 【実演と講演】
- ○絵解きと説教
沙加戸 弘(大谷大学名誉教授) - 【講演】
- 語り物としての説経
阪口 弘之(古典芸能研究センター特別客員研究員・神戸女子大学名誉教授) - 【研究発表】
- ○説経の基層−唱導説話からのアプローチ
小林 健二(古典芸能研究センター客員研究員・国文学研究資料館教授) - ○絵画化された説経−絵巻、奈良絵本のさまざま
川崎 剛志(古典芸能研究センター客員研究員・就実大学人文科学部教授) - ○説教者と身分的周縁
塚田 孝(大阪市立大学大学院文学研究科教授) - ○諸国の説経芝居
和田 修(早稲田大学文学部准教授)