2019.10.26 管理栄養
日本家政学会関西支部の第41回研究発表会が2019年10月26日・土曜日、神戸女子大学教育センターで行われ、神女大の学生36人を含め、学内外から95人が参加しました。
この研究発表会で、家政学部管理栄養士養成課程4年生の藤永 実希さんが「日本家政学会関西支部 若手優秀発表賞」を受賞しました。受賞者は藤永さんを含めて5名で、大学院生が受賞することが多い中、学部生が受賞するという素晴らしい結果となりました。
藤永さんは「アイスクリーム製造における α-シクロデキストリン添加効果」という演題で口頭発表を行いました。3年生後期より、宮本 有香准教授の食品加工学研究室に所属し、同研究室所属の嶺木 若奈さんと共同でこのテーマに取り組み、研究を進めてきました。
アイスクリームは牛乳、卵、砂糖などを原材料とした氷菓であり、冷却しながら撹拌することで製造され、氷の大きさや取り込まれる気泡の量などにより、口当たりや溶けやすさの異なるアイスクリームが製造されます。また、含まれる気泡の量は「オーバーラン」で示され、アイスクリーム中に含まれる脂肪球やタンパク質などの状態だけでなく、製造中、保存中の状態においてもオーバーランは変化し、安定性や食味を損なう可能性があります。 オーバーランはアイスクリーム調製時に取り込まれる空気の量を示すもので、少ないとねっとりとした重たい食感に、多いと軽いふわふわとした食感のアイスクリームとなります。 そこで、「アイスクリーム製造における α-シクロデキストリン添加効果」の研究は、アイスクリーム自体のオーバーランを安定化させることが、均一な製造につながると考え、安定剤として α-シクロデキストリンを添加しました。シクロデキストリンはグルコース6個からなる環状オリゴ糖の一種であり、特定保健用食品のお茶の苦味渋味を低減するためや、チューブわさびの辛み成分の揮発を防ぐためなどに用いられているものです。 実際のアイスクリーム調製時に α-シクロデキストリンを添加し、実験を重ねた結果、添加濃度が低濃度では、アイスクリーム保存時にわずかにオーバーランの低下が抑制されることが明らかとなりました。さらに、1.0%以上 α-シクロデキストリンを添加すると、32 °C 以下での溶解開始時間が無添加よりも有意に遅くなり、安定な溶けにくいアイスクリームが調製されました。 α-シクロデキストリンがアイスクリーム中の乳脂肪を疎水性部分に取り込み、この取り組み度合いがオーバーラン安定性や溶解性に影響している可能性が強く示唆されました。
藤永さんは、「研究が思うように進まず苦労したこともありましたが、1年間続けてきた研究でこのような賞をいただけて本当に嬉しいです。」と話していました。
「日本家政学会関西支部 若手優秀発表賞」は、2008年から、若手の研究奨励などを目的とし、関西支部研究発表会において授与することになったもので、40歳未満の発表・演者に贈られる賞です。研究内容として一定の水準があることを前提に、内容のわかりやすさ、アピール度、表現能力、質疑への対応の的確さ、の四つの視点から総合的に判断されます。