2018.9.1 学園広報
2018年9月1日・土曜日、神戸女子大学ポートアイランドキャンパスにおいて、科学史家・科学哲学者で前東洋英和女学院大学学長、東京大学名誉教授、国際基督教大学名誉教授の村上 陽一郎氏を講師にお迎えし、「コミュニティ・オブ・プラクティス-実践科学としての看護学に期待すること-」というテーマで第4回看護セミナーを開催しました。学内外から研究者、学生、教職員など約80名が参加し、村上氏の「実践科学としての看護への期待」と題された講演と神女大看護学部の野並 葉子学部長との対談を熱心に傾聴していました。
今回の看護セミナーが開催される前日の2018年8月31日・金曜日付で看護学研究科看護学専攻博士前期課程及び博士後期課程の設置が認可されたことより、神戸女子大学看護学研究科開設記念のセミナーとなり、講演に先立って村上氏からもお祝いのお言葉を頂戴しました。
講演で村上氏は、医療は科学や技術が関与するが、それだけでは答えを見つけることができない問題領域であり、医療者と患者双方の心理的な要因や患者個人の特性が治療効果に正負に働くことを、ある看護学生の実習中のエピソードなどを例にあげて説明されました。
医療における「判断」は科学的根拠を超えた範囲で判断が求められる場面が様々に想定され、とりわけ看護や介護では他者の理解が問題となっており、村上氏は、他者が感じている感情や問題を理解する能力「共感 empathy」を持って欲しいと述べられました。最後に「ナラティブ・アプローチ」について言及され、医療者側の根拠に基づく判断と一方的な働きかけだけではなく、患者側の医療への自発的な介入や医療者と患者の間の「共感」を土台とする「協働作業」を考えるべきであると説かれました。
講演後、村上氏と野並学部長が看護を「科学」と「実践」という視点から、興味深い対談を行いました。
対談後には、参加の皆様からの質問の時間を設け、村上氏は相次ぐ質問に一人ひとり丁寧にお応えいただきました。
自立して活躍できる高度な看護実践能力を有する者、実践に役立つ看護ケアを開発する者、コミュニティ・ケアシステムを生み出すことができ、次世代の看護を担う教育者・研究者の育成を目指す看護学研究科看護学専攻博士前期課程と博士後期課程が設置される看護学部にぴったりと合う看護セミナーとなりました。