国際健康福祉プログラムⅢ
2017.9.20 社会福祉学科 木村・下司
デンマーク研修
2017年9月9日~9月15日まで、デンマークのオーデンセ市を拠点に社会福祉関係の研修に行って来ました。参加者は社会福祉学科3年生4名、4年生3名でした。
「オーデンセ市高齢者障がい者課」でオーデンセ市の社会福祉の仕組みや、リハビリテーションに関する考え方を学び、「介護職養成学校」でデンマークの介護職養成についてお話を伺いました。更に、いつでも困った時に行ける駅前の相談窓口及び認知症の進行を遅らせるためのプログラムを実施している「認知症の本人および関係者の直接窓口兼活動の場」と高齢者が地域で安心して暮らすための「高齢者センター」を見学しました。また、特別支援幼稚園を見学したり、国民高等学校といわれる「ノーフュンス・フォイスコーレ」の学生の方たちと交流したりしました。
学生の感想
- 日本と大きく違うと感じたところは、様々なツールのデジタル化です。例えば、高齢者センターの大型タッチパネル、高齢者住宅にあった職員間連絡用のタブレットなどが大きく印象に残りました。現代のIT技術を福祉の現場で駆使し、高齢者の刺激になったり、職員の負担を軽減したりできるということは、良い発展だと思いました。
日本とは税金など福祉に関しての制度から違うため、すぐに真似できるところは少ないですが、実際に行って、実情はどのようになっているのか知ることができたので、貴重な経験だったと思っています。
- 高齢者と接するという面では、日本と変わりなくコミュニケーションが行われていたことがわかりました。しかし、ケアをするというところでは、人の手だけではなく、新しいことを取りいれていたりしていて、そういう面ではデンマークの福祉は進んでいると感じました。また、職員の忙しそうな様子もなく、利用している方と向き合っている姿を見学中によく見受けられました。また、デンマークの考えるリハビリテーションが機能回復ではなく、本人の理想とする姿、自立した生活をするためのリハビリであるという考えが福祉の仕事をするうえで、利用者と誠実に向き合えているのだろうと感じました。ここで学んだことを、就職したときに自分の働く姿に反映していたいと思いました。
- デンマークの教育課程は自分が学びたいことを深く学ぶことが高校生の歳からできることを知りました。授業の中でロボットに事例を設定し、実践的なシチュエーションで行われているため実習に行った時に自信がつくと思いました。実習も3回あり40週間と長い期間のため就職してからも自信になっていると感じました。またシチュエーションルームでの話がとても印象的でした。多くのことが正解は1つではないこと。実践の中でここが違うと指摘するのではなく、その人が自然な考えで行動したことが正解、不正解であれなぜその人がその考え、行動をとったのかみんなで考え試し、評価していくことが大切なこと。その環境づくりを教員側は意識し大切にしているという話が印象的でした。これは日本でも実習や、就職してからも大切な考え方だと思いました。間違えた時に違うと言われるため、言われることを避けて間違わないように行動しがちで自然な考えから生まれる行動は実習などの場面からは少ないと思いました。今回話を聞いて、実際現場での考え方や行動についてもう一度考えたいと思いました。
- デンマークでは見学だけでなく、説明や質疑応答の時間も設けられ、急ぎ足ではありましたが疑問を聞くことができました。今まで当てられてやっと発言する、という生活を続けてきたため、自ら発言することにためらいがありましたが、教員や施設の方から影響を受け、少しは積極的になれたと感じました。一緒に行ったみんなも積極的に発言しており、自分も頑張ろうと思えたため、日本に戻って環境が変わっても、この姿勢を忘れずに活かしていきたいです。
多くの施設を見学しましたが、園長や施設長など、女性の多さや年齢の若さに驚きました。日本では男性が高い地位につくことが多いが、デンマークでは珍しくないことなのかなと感じました。
観光の時間もありましたが、英語は万国共通というぐらい、重要性を再確認しました。お店に入って食事をするにも、切符を買うにも、現地の言葉だけでなく下に英語が書かれているのがほとんどであり、言語の壁でかなり苦戦しました。アルバイトでも外国人に尋ねられる機会が最近増えたため、日本で暮らすからと安心せずに取り組みたいです。
また、多くの場面で周りの人に助けられながらの旅でした。一緒に行ったみんなだけでなく、荷物を運んでくれた通行人や、お店でわかりやすいようにゆっくりと英語で対応してくれた店員さんなど、心温まることが多かったため、日本で外国人を見かけたときは自分も助けられるようにしたいと感じました。
- 特にこの研修で感じたことは、私は自分で考えるという自主性があまりなかったということです。それを意識するだけでも変わってくるのではないかと思い、これから変わっていきたいと感じました。また、この研修で英語もまともに話せない中、お店の人やたまたま近くにいた人が助けてくれることが多くあり、人の優しさを感じる10日間でもありました。こうやって自然に助けることができるのは素晴らしいと感じました。私もそんな人間になりたいと思いました。
オーデンセの宿泊先
黄色の家はアンデルセンの生家
オーデンセ市高齢者障がい者課の職員の方と記念撮影
介護職養成学校在宅介護実習室
ドイツ研修
デンマーク研修に参加した学生のうち、社会福祉学科4年生の2名と3年生4名は、場所をドイツに移し、更に5日間の見学と研修の旅を続けました。
ドイツでは、フランクフルトから日本の新幹線と同様の列車であるICEに揺られること1時間、ケルンで下車し各駅停車の列車で行った先の小さなデューレンという街に今回の実習訪問先、キリスト教系の児童養護施設があります。まず、学生たちの緊張をほぐすために施設長がランチ会を持って下さいました。その際、さりげなく「卒業後はどういった仕事に就きたいと考えているか」と質問して下さり、その答えを聞いて「高齢者施設で働きたいと考えている」と話した学生3名には「では、児童養護施設ではなく、教員が見学に行く高齢者施設に一緒に行ってはどうか」と提案して下さいました。
結果、3名は児童養護施設の各ホームに、3名は別の高齢者施設に見学に行くことができました。
児童養護施設では子どもたちの方が積極的に関心を示してくれ、特に折り紙では集中して出来上がったものを喜んでくれたり、初めてのあやとりをすぐに覚えて巧みな指裁きを見せてくれたりと子どもたちに助けられたとのことでした。しかし日本で子どもたちと接する機会が多くはない学生たちは、もう少しうまくできたのではという後悔もあり、もっとコミュニケーションを持ちたかったと悔し涙を流す学生もいました。
しかし、自分のできない部分が見えたこと、それを悔しいと思えたことが今回の経験の成果であることは間違いないと思います。
高齢者施設での見学では、広大な敷地に入所、デイ、生活援護などの施設が併設されており、庭園は小学校の運動場2つ分はあり、中には職員が同行している人もいましたが、利用者が自由に散策している姿が印象的でした。施設内には、車いすや腕の不自由な人でも投げられる補助具があるボーリング場やプロが定期的に訪問し低額だが有料の散髪屋といった設備が設けられていました。入居者は全員個室で、自分の好きな家具や装飾品を置いていました。日本の介護保険制度はドイツのそれを参考に作成されたものですが、そのことも念頭に置きながら、学生たちは今後の日本の高齢者施設で望まれるであろうことを5年先を行くドイツで学んだと思います。
この度の報告会は学生の実習が終わった2017年11月頃持つ予定です。
ある児童養護施設のリビング。このソファに座って子どもたちはゲームをしたりお喋りしたりしています。
施設長と談笑
施設内の庭で遊ぶ子どもたち
高齢者施設での見学を終えて