国際交流・留学のNews詳細
2007年3月16日
ジョグジャカルタ活動報告書
「インドネシア・ジョグジャカルタ児童を対象とした肥満予防栄養教育プログラムの確立に向けた調査・解析」(インドネシア・ジョグジャカルタ、2007年2月16〜25日)
家政学部栄養生理学研究室
梶原苗美・松本衣代
主な活動
■梶原苗美
インドネシア共和国スラバヤ市にあるAirlangga大学主催(Prof. Askandar会長)のメタボリックシンドロームに関する国際セミナー“Surabaya Metabolic Syndrome Update The 3rd Seminar(SUMETUS-3)”(写真1)にて“ Prevention of Metabolic Syndrome by Food Control(食事コントロールによるメタボリックシンドロームの予防)”について講演した。又、2006年12月に神戸女子大学に客員研究員(神戸女子大学客員講師)として来日し、1ヶ月間家政学部栄養生理学研究室に滞在したDr. Djoko(薬学部講師)とも再会し、2007年3月末に、HUMAP研究者招聘プログラムで、再び来神するのでその打ち合わせを行った。
また、ジャカルタではJICAジャカルタオフィスを訪問し、本大学と研究提携をしているジョグジャカルタ・Gadjah Mada大学との共同プロジェクト“Mini-Hospital Project”協力お願いの件でミーティングを行った。
その後、ジョグジャカルタでは、Gadjah Mada大学先着して、着々と共同研究調査の準備や打ち合わせを進めていたPDの松本衣代さん他、兵庫県立大学講師神原先生や、岡山理科大学教授谷内先生、大和生活習慣病研究所所長谷口先生、研究員で理学療法士の成瀬先生、そして、梶原研究室のゼミ生の中塚さんや今井さんと合流した。2006年5月に本学と研究教育提携を結んだGadjah Mada大学医学部学部長Prof. Dr. Harjianto氏並びにProf. Dr. Mumbarica女史(ともに、提携記念の表敬訪問として2006年11月御夫妻で神戸女子大学を訪問された)、小児科長Dr.Sunartini女史とmini-hospital projectについてのミーティング、Gadjah Mada大学側からの共同研究申し入れpresentationへの参加(写真2)、インドネシア・ジョグジャカルタ児童を対象とした肥満予防栄養教育プログラムの確立に向けた調査・解析ミーティング等精力的に活動した。
デンパサルではUdayana大学を訪問し、Prof. Suastika(医学部副学部長、内分泌内科長)とバリ島原住民の3年前の調査結果の検討と共同研究再開(フォローアップスタディ)の打ち合わせを実施してきた。
今回のインドネシア訪問については、非常に強行軍で、とにかく忙しい日程であった。セミナーや重要な研究打ち合わせ他、既に立派な建物は昨年完成し、そこでのコメディカルの学生や地域医療従事者の研修はスタートしているガジャマダ大学のミニホスピタル(研修センター)に対するJICAの支援を得る為のジャカルタのJICA事務所訪問に関してはまだ今後の多くの課題を頂いた状況で前途多難であるが、今回同行される予定で直前にご一緒できなくなった、(財)ひょうご震災記念21世紀研究機構の宇都宮氏のバックアップを引き続き仰いで腰をすえて進めることになると思われる。
■松本衣代(PD)・梶原研究室ゼミ生:中塚聡子・今井里衣
ジョグジャカルタ・Gadjah Mada大学のゲストハウスに滞在し、Gadjah Mada大学医学部看護学科との共同研究プロジェクト「インドネシア・ジョグジャカルタ児童を対象とした肥満予防栄養教育プログラムの確立に向けた調査・解析」を実施の為、歓語学科の看護師、医師、栄養士達共同研究スタッフと共に都市部私立小学校並びに比較的農村部の公立小学校の2校を訪問した。
都市部私立小学校(Luqman Al Hakim小学校:全校生徒864人)では、小学校教員、Gadjah Mada大学側共同研究者、並びに日本側共同研究者(岡山理科大学谷内孝次教授、兵庫県立大学神原咲子講師、大和生活習慣病研究所成瀬文博研究員)と共に、本小学校で求められている健康教育のありかたについてのミーティングを行った(写真3)。本小学校は健康教育実施に対して大変協力的で既に一昨年のパイロットスタディ時にGadjah Mada大学側と日本側で作成したprotocolに基づいた健康教育が小学校1年生(129人)、2年生(154人)を対象とし実施されている。栄養教育としては、フードガイドピラミッドを用いた栄養素の働き等の説明、運動教育としては、インドネシアの公立小学校で体育の授業で取り入れられているSKJ(Senam Kesehatan Jasmani :健康体操)が本研究開始と共に取り入れられた(写真4-1〜3)。
この小学校では、同時に対象児童の身体計測(Anthropologyデータ:身長・体重・上腕周囲径・上肢インピーダンス抵抗値)の測定を実施した。
また、後日対象小学生の両親を対象とした健康教育保護者会(参加保護者数約180人)をBalan市の市役所大会議室を借り実施した。栄養教育は肥満と痩せの説明、フードガイドピラミッドによる栄養素の説明、間食についての注意点等をGadjah Mada共同研究者が行った。同時に日本側共同研究者による食嗜好・食行動アンケートを実施した。対象児童の両親にはあらかじめアンケート用紙(Questionnaire)をGadjah Mada大学共同研究者側が配布しており、それらを回収した。
もう一つの対象小学校である比較的農村部の公立小学校(Sleman地区Titroadi小学校)は、一昨年のパイロットスタディ時に訪問した小学校であり、2006年5月に起こったジャワ島中部地震で全壊した小学校である。そこでは、本学3年生で、梶原研究室ゼミ生の中塚聡子さんと今井里衣さんが作成した栄養指導媒体を用いて、Gadjah Mada大学看護学部のAkhamadiさんと共同で児童並びに保護者に対しての栄養指導が行われた(写真5)。
また、身体計測(Anthropologyデータの測定)を児童(身長・体重・上腕周囲径・上肢インピーダンス抵抗値・ウエスト周囲径・上腕皮下脂肪厚)並びに保護者(身長・体重・上腕皮下脂肪厚)に行った(写真6)。
期間中は、当研究室に客員講師として来日した事もあるWidyawatiさん(2005年)のご自宅で夕食をごちそうになったり、同じくAlimさん(2006年)がジョグジャカルタで大人気のケータリング?料理をゲストハウスまで届けてくれたり、ジョグジャカルタの若者に現在大人気のナシバカール(焼き飯)屋さんに連れて行ってもらったりと余暇も楽しんだ。しかし、その中で多くの人が付け合せの野菜に手をつけない事や、お茶にさえ必ず大量の砂糖を入れてしまう現地の食事情を実際目にする事ができた。また、日曜日には、世界遺産であり大乗仏教の遺跡であるボロブドゥール寺院にGadjah Mada大学の大学院生の案内で訪問できた(写真7)。ボロブドゥール寺院では、スツゥーパと呼ばれる仏塔の中に仏像が鎮座しており、その中の仏像の手を握ると願い事が叶うといわれている。隙間が狭く、なかなかうまくいかなかったが、最後には全員仏様の手を握る事ができた。
今回のGadjah Mada大学との共同研究実施については思い通りに事が運ばない場面や、言葉の壁を感じる事も多々あったが、インドネシアにおける健康教育の必要性や国際共同研究のやりがいなど改めて多くの発見も有り、又、学生さんにとって非常に感動的な経験の日々であったようである。