地域連携・生涯学習のEvents詳細
2007年10月27日
[詳細]第2回「須磨離宮公園学」開催
「フランス薔薇の伝統〜ヴェルサイユからバガテルまで〜」
講師:神戸女子大学文学部准教授:赤井義弘氏
美しい薔薇園の映像が心地よい音楽の調べと共にスクリーンに映し出され講座は始まりました。
最初はNHKで放映された薔薇の特集番組の映像。
夜明けと共に花摘みが行われるモロッコのダマセナという村の薔薇摘みの風景です。9時から10時までには摘み終わるという作業は、一家総出で香りのエッセンスを飛ばさないよう、全て手摘みで行われ芳香油を蒸留する作業場に運ばれ精製されます。
一箇所に集められた花は余分なゴミを落とすためにフォーク状の農具で空中に掻き揚げられ、薔薇の花が画面いっぱいに降り注ぐ場面では会場が一瞬どよめきました。
イスラム世界ではフキと呼ばれる民間治療医により頭痛や胃腸病などで、現在でもこうした香油(エッセンシャルオイル)を使った治療が行われていることが赤井准教授から解説されました。
続いてのビデオは、赤井准教授がパリに留学した折、郊外にあるバガテルとライレローズ両薔薇園を撮影したもので、帰国後編集し一本のDVDにまとめられたものです。
フランスでも特に著名なこれらの庭園には、現在世界で栽培されているほとんどの薔薇の品種を観ることができます。
特にバガテルは、静岡県賀茂郡の河津町が(※1)パリバガテル公園と提携を結びパリのバガテル公園がそのまま再現されており、日本にいながらパリの雰囲気を満喫することができます。
受講生は、次々に画面に現われる色とりどりの薔薇と巧みに設計された庭園を見つめながら、赤井准教授の解説に耳を傾けていました。
オールドローズでは種種ある中でも概ね、ガリカ・ダマスク・アルバ・センティフォリアが代表とされます。
このオールドローズに対してモダンローズと呼称される薔薇たちは、1867年に育種家によって作られたラ・フランスを基準としてこれ以後に生まれた薔薇を呼ぶようですが、アメリカとフランスで認識が違うということでした。
フランスにおける最初の薔薇栽培の革命はオールドローズに始まり春だけの一回咲きでした。それがシノワズリー(中国趣味)の影響で、中国の原種バラと交配することで四季咲きの特性が生まれました。
第2の革命は、パリの万国博覧会を機にフランスで沸き起こったジャポニスム(日本ブーム)で、この時日本原種バラとの交配が行われたことでつる性や起立性の品種が生まれました。
この時代フランスのアールヌーボォに大きな影響を及ぼしジャポニスム(日本ブーム)の火付け役となった日本人が(※2)高島北海(本名:得三 山口県萩市出身)です。
ナンシー高等森林学校留学中、アール・ヌーヴォー・ナンシー派のエミール・ガレらとの交流の中で、日本画を通して日本美術が持つ奥深い精神的創意紹介し、それが彼らに大きな影響を与えたことでジャポニスムへと発展したということでした。
また薔薇の品種改良では、ナポレオンの皇后であったジョセフィーヌの存在が重要であることや、現在ライレローズバラ園には、日本人の育種家であった小野寺とおるさんの白薔薇「のぞみ」が唯一植えられており大変名誉なことであるという話がありました。
今回は薔薇を通して、日仏文化の交流や貢献した多くの人々の歴史にも触れたバラエティあふれる講座となりました。
講座の後はお楽しみの離宮公園散策です。大学からの坂道を徒歩で公園まで向かいます。
今回も多くの有志が参加しての楽しい散策のひとときとなりました。
当日は、利用者の方にお願いするアンケート調査に学生も参加しており、「こんにちは!」と元気に声をかけてくれました。
噴水広場では、春とはまた違った表情を見せてくれる薔薇の花たちが出迎えてくれます。
本日の講座を振り返りながら、最初はヨーロッパの薔薇たちに大きな革命をもたらしたといわれる中国と日本の原種薔薇が咲き乱れる中門広場前からの出発です。
中国の薔薇たちは大きくしっかりしたその花の特色を、四季咲きや香という形でヨーロッパの薔薇たちに貢献をしました。
地を這うように広がるノイバラ達は、起立性の薔薇や花のアーチに欠くことができないつる性の薔薇へと改良された解説を聞きながら、慎ましく小さな花をつける日本の原種薔薇たちが、品種改良だけでなくフランス文化にジャポニスムという大きな革命を起こしたことを偲びながらゆっくりと歩を進めました。
噴水広場の薔薇たちは王侯貴族の薔薇園の名に相応しく、秋の日差しを浴びて煌くばかりの大輪の花々が出迎えてくれました。
春より幾分か濃い色目の装いの薔薇たちは、秋ならではの趣きの違った顔を見せ訪れる者たちの目を楽しませてくれています。
この喜びはまさに本日の講座で学んだ、春に一度しか楽しむことができなかったオールドローズに中国の原種薔薇の遺伝子が大いに貢献した結果であることを考えると、育種家と呼ばれる人々の探究心と苦労、なにより薔薇に対する情熱の深さを考えさせられます。
今回は庭園内の薔薇を品種ごとに特性や栽培についての解説とともに、名前に縁の人物の簡単なプロフィールを交えながら丹念に観て回りました。
薔薇を通して多くの人々の生き方や考え方に触れることができた講座はこうして幕を閉じました。
写真をもっと見る